おなじ儀式を体験したもの同士の心理的な結束は強い 第 673 号

 <日本は戦争に負けていない>-ブラジル日系

移民社会を二分した「勝ち組負け組」事件。

 勝ち組は狂信的なテロリストという

定説は本当なのか! ?

 一方的に狂信者、テロリストと決めつけられ、

抹殺された人々の声を掘り起こし移民とは、

ナショナリズムとはなにかを問う、邦字

新聞記者の、日本近代史のミッシングリングに

挑む渾身のルポルタージュ!

 「日本人」という民族を観察するのに、移民をそ

の試験台に活用できるのではと常々思っている。

 私の前任者・吉田尚則元編集長からは「移民は

壮大な民族学的実験だ」と聞かされて

きたことも影響している。

 日本社会の一部をすくい出して、ヨーロッパ文明

を基調とした文化を持つ「ブラジル」という培地

に植え付けて100年がかりで培養する中で、

「日本人」という種が、どのように振る

舞うのかを経年観察する、という行為

が、ブラジル日本人移民史ではないかと思い至った。

 「5年で帰れる」と思って日本を離れ、10年、

20年経っても帰れない辛さが、日本の

日本人に想像できるだろうか

 「郷愁」という概念は、セピア色の

ロマンチックなものではない。

 そんな帰るはずの祖国に帰れない落胆の

ひどさが、勝ち負け抗争の背景にはあった。

 第2次世界大戦の終戦をめぐって、ブラジル日系

社会では、日本の敗戦を信じたくなかった「勝ち

組(信念派)」と、早々に敗戦を悟った「負け

組(認識派)」が血みどろの争いを起こした

 それに関して、日本でもおりおりに新聞報道

され、テレビ番組が作られてきたが、多くは

「勝ち組」=「テロリスト」、「臣道連盟」

=「狂信者」というニュアンスを持っている。

 基本的、勝ち組が一方的に負け組を殺害

したかのように描かれている。

 邦字紙で20年余り記者をする中で、その視点

に対し、つねづね疑問をもっていきた。

 移民の家庭をリアルに想像できれば、日本人と

外国人の違いを肌身で感じることができる。

 移民はエリートではない。

 「どこにでもいる一般市民が外国生活を

始めること」が移住の本質だ。

 そのような一般人が、いかに外国でも日本人

たろうとしてきたかが、ブラジル日本

移民の真骨頂だと思う。

 日本人性を最大限に活用して、ゼロから始めて

体当たりでブラジル社会に貢献してきた日本

移民たちの姿は、今から国際社会に飛び

出そうとする日本人の発想に役に

立つモノではないか。

 評論家の大宅壮一は1954年に取材旅行のために

来伯した際、「明治の日本が見たければブラジル

にいけ!」との名セリフを残したとコロニア

(日系社会)では伝えられている。

 赤道通過時に行われる「赤道祭」や運動会は、

移住体験に欠かせない心理的な「儀式」だった。

 おなじ儀式を体験したものの

同士の心理的な結束は強い。

 日本では学校の同窓会が一般的だが、移民に

とっては「同船者会」という存在が別格だ。

 同じ船に乗り、同じ不安を抱えてブラジルに

やって来たという共通の体験が、あたかも

ブラジルという外地における「戦友」

のような連帯感を生んでいる

 船を降りてサントスに上陸することは、その瞬間に、

日本での学歴や家系、経歴を一端断ち切り、人生の

すべてを一から再出発させることを意味した。

 勝ち負け抗争は、ある意味、まだ終わっていない。

 その揺り返しの時代が来ているからだ。

 子孫や地元ブラジル人らにより、勝ち負け抗争を

ブラジル近代史の中で、より妥当な形に位置

付ける解釈見直しの作業が始まっている。

 深沢正雪

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 今回も最後までお読みくださり、ありがとう

              ございました。感謝!

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