さまざまなメディアの勘所に人脈の網を広げている 第1,546号

 「情報を制する国が勝つ」とはどういうこと

か―。世界中に衝撃を与え、セルビア非難

に向かわせた「民族浄化」報道は、実は

アメリカの凄腕PRマンの情報操作

によるものだった。

 国際世論をつくり、誘導する情報戦の実態を

圧倒的迫力で描き、講談社ノンフィクション

賞・新潮ドキュメント賞をW受賞した傑作。

 PR会社は広告ではなく、それ以外の、水面下

の情報戦に訴えるのが仕事である。

 ジム・ハーフを「伝説の男」にした『戦争広告

代理店』で描いたのは、ハーフが、ボスニア

紛争という1990年代におきた旧ユーゴス

ラビアの激しい民族紛争の裏側で、紛争

当事者の一方に雇われ、そのための

情報戦をいかに繰り広げられたか

という内幕劇だ。

 ハーフがしたことは、大手新聞やテレビなど

のメディアとワシントンの政界の要所にあり

とあらゆる方法を持って働きかけ、戦場

では軍事的に遥かに劣勢だったクライ

アントの「ムスリム人勢力」が、国

際世論の強い支援を受けること

に成功させたことだ。

 ハーフは、ボスニア紛争当時はアメリカを

代表する大手PR会社「ルーダー・フィン」

社の幹部社員としてそのワシントン支局

を任されていた。しかし、ボスニア

紛争の情報戦を勝ち抜いたことで、

全米PR協会の「シルバー・アン

ビル賞」を受賞し、それを機

に独立、現在まで自らのPR

会社「グローバル・コミュ

ニケーターズ」のCEOを務めている。

 ハーフはまず、「国際紛争の帰趨を決する

情報戦略」の秘訣を、3つのキーワード

を使って明かした。

1.「重要なのは伝えるべきメッセージとは何か。

一つか二つのメッセージに絞ること。それが大切」

2.誰にこのメッセージを伝えるかということ。

「大切なのはメッセンジャー。誰が伝える

べきメッセージを口にするか。つまり

スポークスパーソンの選択」

3.メディアの重要性。「伝えるべきメッセージを、

マーケットにどのメディアを通じて投下して

いくか。それがカギになる」

 「メッセージ」「スポークスパーソン」「メディア」

という3つのキーワードで語られる「情報戦」

の真髄。ハーフは言う。「これらのことは

非常に基本的な考え方です。しかし、

驚くべきことに、人々はこれらを

本当の意味で理解しようと努

力したりはしないのです」

 実際に効果をあげるのは地道で理にかなった

方法の積み重ねである。その正しい方法を

知っているかいないか、それが実行で

きるかできないかが、「情報戦」

の結果を左右するのである。

 ハーフは、PRエキスパートとなってから

現在に至るまでワシントンDCに住み、ア

メリカ政治やメディアの情勢に通暁している。

 ハーフがいかにメディアの人間を大切にするか

ということは、メディアの一員である私自身が、

『戦争広告代理店』の取材当時身をもって感じた。

 当時30代で、何の実績もなく日本からやって

きた私のしつこい取材にいやな顔ひとつする

ことなく、何回も、数時間にわたるイン

タビューに応じた。

 そして自ら「メディアに対しては、1日24時間、

週7日間対応します」と言い、実際に日曜で

あっても頼めばオフィスに出てきて対応

した。3大ネットワークやCNN、ある

いは有力紙のどこの誰に接触すれば

影響力があるかを知り尽くし、さ

まざまなメディアの勘所に人脈の網を広げている。

 高木徹『いま「国際情報戦」は

    どうなっているのか:ジム・ハーフ』

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 今回も最後までお読みくださり、

       ありがとうございました。感謝!

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