インテリジェンスの世界の深淵を垣間見た稀な人々 = 2-1 = 第 531号

 フセイン包囲網に130億ドルを拠出しながら、

世界から冷笑で迎えられた不可解。

 現場からの命がけの情報を生かせない

日本の官僚機構の不可解。

 驚異的な取材力で日本湾岸外交をたどる、

情報ノンフィクション。

 シリアに小野寺あり。

 「東京経由のインテリジェンスに意外な

拾い物がある」この頃、ワシントンの情報関係者の

間でこんな話が囁かれていた。

 湾岸情報を一方的に享受するばかりだった日本。

 しかし、その東京情報には時折目を瞠るような

上質なものが含まれているというのである。

 「東京経由のインテリジェンスの拾い物」は、

日米間の情報インバランスの改善に

無視できない役割を果たした。

 イラクのフセイン政権の中枢に諜報ネットワークを

張り巡らし、日本へ貴重な情報をもたらしていた

のは、BND・ドイツ連邦情報局だった。

 バイエルンの美しい古都ミュンヘン郊外プルラッハに

本部を持つBNDは、旧ドイツ陸軍の対ソ秘密情報機関

として知られる「東方外国軍課」にその淵源を有する。

 ソ連や東ヨーロッパに諜報網を作り上げたのは「顔の

ない男」と呼ばれた、ラインハルト・ゲーレンだった。

 ゲーレンは回顧録のなかで、「アラブ諸国の伝統的

な親ドイツ傾向は、西ドイツの国家戦略を再構築

するうえで計り知れない価値があった」

と告白している。

 BNDは、エジプト、イスラエル、イラン、イラク

など、中東の戦略拠点に諜報エージェントを

巧みに配していたのである。

 日本は、意外な街でこの強力な情報機関と密やかな

コンタクトを保ち続けていた。

 アラブ強硬派シリアの首都ダマスカスがそれである。

 当時、シリアには外務省ドイツ・スクールに属し、

「衝立の向こうでドイツ語を話していれば日本人

と思う者はいない」といわれた小野寺龍二が

日本大使として在勤していた。

 彼は情報調査局の審議官や防衛庁の国際担当

参事官を歴任するなど、インテリジェンス

畑を歩んだ数少ない外交官だった。

 小野寺は幼少時をラトビアそしてスウェーデン

で送り、かの地で第二次世界大戦の終結を

目撃するという数奇な体験を持つ。

 父である、小野寺信は帝国陸軍のストックホルム

駐在武官として連合国側の情報収集にあたっていた。

 小野寺信の情報ルートを通じて日本にもたらされた

機密情報のひとつが、「ヤルタ密約」だった。

 しかし、その情報は国策にいかされなかった。

 情報の持つ業の深さ、その非情さ。

 小野寺家の父母とその息子は、インテリジェンス

の世界の深淵を垣間見た稀な人々であった。

 そして運命のめぐり合せだろうか。

 日本は、戦後45年目にして遭遇した国際的危機

にあって、再び小野寺を必要としたのである。

 息子、龍二の血のなかには、紛れもなく、

父の信念が脈打っていた。

 真に価値のある情報を得ようと思えば、情報源

との間に深い人間的な絆を築き上げるほか

道はない、と。

 「敵についての知識は、神からも悪魔からも得る

ことはできない。

 それは、洞察によってのみ手に入れることが可能

である」イギリス秘密諜報部に永く言い

伝えられている格言だ。

 情報活動は極めて人間的な営為である。

 深慮とひらめき。

 このふたつがあいまって鋭い洞察力を生む。

 「イスラエル、ベルリン、ワシントン、ロンドン。

 日本ほど経済大国になれば、世界各地から枢要な

インテリジェンスが、各省や民間のルートを

通じて怒涛のように流れ込んでくる。

 そこからわずかに光り輝くダイヤモンドを選り

分ける眼力を持ち、時に互いに交換し、価値

を認め合うことこそ大切なのだ。

 だが東京は、宝石の原石を金にあかして買い漁り、

玉石混合のまま金庫にしまいこむ商人にも似ている

 東京で長年、日本の情報に対する鈍感さを目撃し

続けている英国外交官の皮肉な弁である。

 「人の国に情報を頼っていて、どうして

独自の外交など望めようか。

 たとえ、情報を他国に頼ったとしても、自らの力で

検証できず、どうして自国の政策を満足に遂行

できるだろうか」このイギリス外交官は、

日本にこんな疑問を投げかけている。

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 今回も最後までお読みくださり、ありがとう

             ございました。 感謝!

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