君はいま生きている時代に感じたものを表現するんだ 第 897 号

 漆芸家で人間国宝の室瀬和美さん。

 漆の道を歩んでいく上で最も刺激的な

学びを得たのは、蒔絵の人間国宝・

松田権六さんだったと言います。

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 室瀬 和美(漆芸家/人間国宝)

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──いまでも印象に残っている松田先生

の教えはありますか。

 教えは本当にいっぱいありましたけど、

特に私が後進に伝えているのは、もの

をつくる作家として生きていくため

に必要な「三つの学び方」のお話です。

 松田先生がおっしゃるには、学び方

には三つの段階があって、まず第一

段階は「人から教わる」ことだと。

 学校の先生や先輩、職人であれば

師匠から直接教わる。

 そして第二段階は、「ものから教わる」。

 だいたいの人が、「先生から学んで、

勉強になりました」で終わってしま

うけれども、実はその教えてくれ

た先生も一世代前の人に教わっ

たことを伝えてくれているわけだから、

 せいぜい、三代前くらいの

技術しか教われない。

 ただ、例えば漆工芸では、千年前につく

られた作品がいまなお腐らずに残っている。

 その千年前の技術や、途中で途絶えて

しまった仕事を教えてくれるのは、人

ではなく、作品そのものがいろいろ

な情報を出してくれるんだよと。

──千年前の作品が教えてくれる。

 ただ、「ものから教わる」といっても、

ものが喋ってくれるわけではないです

から、学生の私には全然ピンと

きませんでした。

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 そして、最後の第三段階の学び方

は、「自然から学ぶ」。

 人やものから学ぶことは あくまで先人

や既に形あるものから教わることであっ

て、自ら作品を創り出していくこと

には繋がらないと。

 要するに松田先生は、木々や風や日光

など、四季折々に変化する自然から

生まれるエネルギーをキャッチし、

それを自分の表現にどう生かし

ていくかが、創作者として

最も大事だと言うんですね。

 そして、平安、鎌倉、江戸時代の人も、

それぞれ皆その時代に感じたものを

表現しているのであって、彼ら

の真似をしてもしょうがない。

 君はいま生きている時代に感じた

ものを表現するんだと。

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 『致知』  2018年1月号

           特集「仕事と人生」P46

今回も最後までお読みくださり、

    ありがとうございました。感謝!

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