子供が最後に言った言葉を.私は一生忘れません 第1,338号

本日は鈴木秀子さんが被災地で出逢った
あるお母さんのエピソードを振り返りながら、
亡くなった方々を偲びたいと思います。

致知出版社の人間力メルマガ 2019.3.11
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東日本大震災の1か月後に被災地を訪問した折、
息子を亡くした一人のお母さんに出会いました。

南三陸町のそのお宅では、お父さんが1年前に交通事故で亡くなり、
母子2人で寄り添って暮らしていました。

3月11日当日、10歳の息子は風邪をひいて家で休んでいました。
そこに激しい地震が訪れ、大津波が来るという報せを受けて、
避難することになったのです。

着の身着のままで外に出ようとした時、
お母さんはふと思い立ちました。

「お母さんは大事なものを取ってくるので、ここにいてね」

病気の息子のために、2階から防寒具を
取ってこようとしたのです。すると、

「僕が大事なもの、持ってきたよ」

子供が見せたものは、仏壇から持ち出した父親の遺影でした。

「そう、お父さんは一緒なんだ。じゃあすぐ戻るから待っててね」

そう言い残してお母さんが2階に駆け上がるや否や、
津波が1階をのみ込んだのです。
あっと思う間もなく息子の姿は消えました。
お母さんは2階で身動きが取れなくなったまま
かろうじて助かりましたが、水が引いたあと、
どこを捜しても息子の姿は見つかりませんでした。

震災から1か月後、辛い記憶を振り返ってお母さんはこう語りました。

「あの子にとって、最も大事なのはお父さんでした。
 息子は先にお父さんのもとに行きましたが、
 あの子は、家族がいかに大事かということを
 身をもって私に教えてくれました。子供を失ったことは、
 胸が張り裂けるくらい辛いです。その悲しみのなかでも、
 自分がよい家族をもったことが唯一の慰めです。
 子供が最後に言った言葉を、私は一生忘れません」

この話の中に、私は厳しい現実と正面から対峙しながらも、
悲嘆に溺れることのない、前向きな姿勢を感じました。

心を偽らずに嘆き悲しむことは、
前に進むための一つのプロセスです。

けれども泣き叫んだ後には、
止め処ない憂いの淵に沈んでいかないよう、
自身を律する力を持つことが必要なのです。

想像を絶する苦難に見舞われた時、
再び立ち上がる力を得るためには、
心の深いところに潜む人間性を生かさなければなりません。

能面のような顔で感情を押し殺しては、
持って生まれた人間性が壊れてしまいます。

泣いてもよい時には涙をいっぱい流すことが大切なのです。
家族の前など、感情を剥き出しにしても安全な場において、
辛い思いを吐き出す。そうすることで、
自分の気持ちをしっかり捉えることができるのです。

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現在、『致知』では鈴木秀子さんの
「人生を照らす言葉」を連載中です。
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 今回も最後までお読みくださり、

      ありがとうございました。感謝!

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