情報に対する極端な無関心と無知を改善する糸口を作る = 3-2 = 第 297 号

 1967年に異動して就いたのが資料課長

(一年後に分析課に変名)というポストで、

そこから今に至る、私の国際情勢判断の

人生が始まったといっていいでしょう。

配属時点で私は36歳でした。

 私は共産圏について何も知りませんでしたから、

一体何をしたらいいだろうと上司に聞いたら、

まず異動する前に、レーニン全集と毛沢東

全集を全部読め、そこから始めろと言われました。

 レーニン全集は、最近は読む人はいませんが、

大変面白いものです。

 分析課の部屋の左側に並んでいる調査班の

職員は、全員調査のプロで私より年上、

当然月給も上でした。

 戦前の満州にあったハルピン学院や、上海に

あった東亜同文書院を出ている

専門家ばかりでした。

 彼らを部下としてまとめるのが、私の

分析課長としての出発でした。

 無我夢中で勉強しました。

 共産圏の専門家は共産党の機関紙や政府紙である、

『プラウダ』『イズベスチヤ』『人民日報』

『解放軍報』など掲載された難しい論文

を読み解くのが仕事です。

 こうして格闘していくうちに、だんだんと

やり方が見えてきて、中国とソ連の共産圏

分析については公式文書を徹底的に読む

ことが王道だとわかりました。

 トップの政策は決まっていて、こうした公式

文書は内容に必ず干渉しているから、それを

長期間、欠かさず読むと共産党、すなわち

政府の政策、方針が読み取れる

ようになります。

 共産圏分析のすべては、公開情報を漏れなく

継続的に読むことです。

 党の機関紙には、党の言いたいことが書いて

あるだけでなく、書いて欲しくないことは

一切書かれていないからです。

 当時、英国にビクター・ゾルザという共産圏

が専門のジェーナリストがいました。

 中国で文化革命があると予言し、ソ連がチェコ

に侵入するかどうかで世界中が緊張していた

ときに、「必ず侵入する」と言った

ただ一人の人でした。

 この人は情報は四六時中、継続的に見ているが、

ただし、公開情報以外は一切見ないという

やり方を貫いていました。

 私はサウジアラビア大使もタイ大使も、在任期間

の最長不倒記録です。

 どこへ行ってもオーバーステイです。

 どこかのポストに着任すると、私はその国の

歴史文化の研究から始めます。

 そんな大使は、初めの一年は役に立ちません。

 ところが二年目になると、歴史文化研究が

基礎になっているから断然強くなります。

 そうすると余人をもって替えられなくなり、

今度は後任が見つかりにくい。

 また私のような使いにくい人間は

引き取り手がない。

 というわけで、全部オーバーステイになって

しまったのです。

 私は国際社会は国家間の力の関係であり、

その中で最も基本的なものは、

軍事力という考えです。

 米国留学から帰国して外務省に戻り、就いた

ポストは調査企画部長です。

 私は入省後ほぼ一貫して国際情勢分析を

専門にしてきましたが、その要のポスト

に就いたことになります。

 私は分析課長以来、「情報分析とは、とにかく

公開資料を徹底的に読み解いて、国際情勢を

見通すことにある」と確信してきました。

 調査企画部長として毎日毎日、情報が上がって

来たら、自分で率先して考え、分析し、書き

下ろして部下と一緒に議論しました。

 日本を戦争の破局に導いた情報軽視や、情報に

対する極端な無関心と無知を改善する糸口を

作りたいというのが、私の宿願でした。

 サウジアラビアの地域について知るための一番

良い本は、今も『ローマ帝国衰亡史』です。

 これは天下一品の難文ですが、私の知っている

かぎり、アラビア半島に関しては一番

権威がある本です。

 陸奥宗光というのは私の縁続きではありましたが、

砂漠の中に3年滞在して、彼の伝記を書き進めれ

ば進めるほど、陸奥の偉大さがわかりました。

 陸奥は、一種のルネサンス的人間です。

 法律、政治、経済だけでなく、哲学も中国哲学

から、イギリスの啓蒙哲学に至るまで通じて

いる思想家です。

 彼は若い頃、江戸で漢学を勉強しています。

 家が没落しましたから、志を立てて猛烈に

勉強し、漢学の素養は超一流でした。

 世の中にわからないものがある、という

ことがわかると、偏見がなくなり、

視野が一挙に前に開けます。

 最近、はじめて哲学書が読めるように

なってきました。

 本当のところは何もわからないのです。

 わからないけれども、門前の小僧習わぬ経を

読む、というやつで、最高のお坊さんの

お経を毎日聞いていたら、小僧だって

やっぱり経を読む真髄がわかる

のでしょう。

 繰り返しになりますが、ビクター・ゾルザは、

当時最も尊敬されていた共産圏分析

の専門家でした。

 彼の言っていることはただ一つで、秘密情報、

聞き込み情報は絶対に読まない。

  『プラウダ』『イズベスチヤ』『人民日報』

だけを読む。

 私がアメリカ情報に自信を持てるように

なったのは、ここ数年です。

 日本だけではなく世界中がアメリカを

読めなくて、失敗しました。

 どうすればアメリカを把握できるだろうか。

 トレンドを正確につかむにはどうしたらいいか。

 米国は世論と政治の動向を読み解かねば予測

できません。

 世論、議会、ホワイトハウス、国務省があり、

お互いに意見を戦わせるうちに政策が出てくる。

 お互いに、ああだこうだ言っているうちに政策

が出てきます。

 だから全部を眺めて、どういうことを言って

いるかがわかると、それで大丈夫なのです。

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   今回も最後までお読みくださり、ありがとう

               ございました。 感謝!

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