心にじわっと響く母子の物語⇔思いやりの心が人を生かす 第 78 号

あるスポーツ選手とそのお母さんの実話。

そこには、人間の生きる意味がシンプルに描かれています。

「人間というものは、何か人のために尽くすことによって、

大いなる力を得ていくものなのでしょう」

円覚寺館長・横田南嶺さんの言葉がすっと入ってきます。

────────『今日の注目の人』──

◆ 思いやりの心が人を生かす ◆

横田 南嶺(鎌倉円覚寺館長)

───────────────────

とりわけ印象深いのが、盛岡で農業をされているあるご婦人から

毎年届く新米です。

ご婦人とは5、6年前、円覚寺の坐禅会に参加してくださったのが

ご縁でした。

日帰りの会ならともかく、泊まり込みの坐禅会となるとなかなか

修行も厳しく、女性の参加は珍しいので何かご事情でもあるのかと

思い、ある時お話をお聞きしたのです。

ご婦人がおっしゃるには、あるスポーツの選手だった息子さんが

大きな大会で事故を起こして首の骨を折り、首から下がほとんど

動かない状態になってしまわれた。絶望した息子さんは、

電動車イスで病院の屋上まで上がり、飛び降り自殺を図ろうと

したけども、体が思うように動かず思い止まったのだと。

しかし、お話を聞いていて驚きました。

その息子さんはそこから大学に復帰し、さらに一人暮らしを

始めたというのです。

ご婦人は「私はあの子が転んでも絶対に起こしてあげないんです」

とおっしゃいました。

体が不自由な子が転べば、すぐにでも手を差し伸べたいのが親と

いうものでしょう。

しかし、ご婦人は自分が先に亡くなった時、息子さんが一人で

生きていかなくてはいけないことを分かっておられたのです。

息子さんにもその思いが伝わったのか、「自分は母のために

生きるんだ。自分が暗くなれば、お母さんがいつまでも辛い

思いをしてしまう。だから、頑張って生きるんだ」。

そう言っていたそうです。

その言葉のとおり、彼は一所懸命勉強して運転免許を取得し、

いま地方公務員として立派に自立しておられます。

ご婦人は私にこう言われました。

「管長さん、私はいろいろ苦しんで悲しんで、泣くだけ泣きました。

でも私が子供にできることはたった一つ。一日一日を明るく

生きること。それだけです。

もし私が辛い顔をしていたら、息子は母が悲しむのは自分のせいだと

自分を責めてしまう。だからこれからも明るく生きていくの」

もし、お二人が自分のことばかりを考えていたら、心は折れて

いたかもしれません。

しかし、息子さんは母のために生きよう、ご婦人は息子に辛い

思いをさせたくないために明るく生きようと、それぞれに思いを

貫いて生きておられます。

人間というものは、何か人のために尽くすことによって、大いなる力を

得ていくものなのでしょう。

私は菩提心の発現ともいえる、この母子の姿からそのことを教わる思いでした。

  月刊誌『致知』 2016年3月号P18 特集「願いに生きる」より

          今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。 感謝!   

スポンサードリンク

♥こちら噂の話題満載情報♥

ぜひ、いいね!を「ぽちっ」とお願いします

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)