その言葉は本心 ? 本音なの? (その2) 第 101 号

  文豪の山本有三(1887-1974)に『ことばの力』と題する次のような一文が

 あります。

             一個のパンをわけあう

             分けあって食べるふたりの心

             心と心がことばで通う

             「ごちそうさま」「いいえ」

   「山の上のあの花は なんという花だっけ」

   ツリガネソウだ きれいだったな

   ことばで その花がほかの花と区別され

   ことばで 過ぎ去った日がよみがえる

        「それは そうじゃない こうなんだ」

        「わかった しかし こういうことばはどうだ」

        ことばと共に 生活が正しくされる

        ことばと共におたがいの心が みがかれる

   むかしを今に受けつぐことば

   きょうをあしたへ進めることば

   東と西とつなぐことば

   人間だけが持っている ことばの力よ

   ことばのすばらしさよ

 私達がふだん語っている言葉には、自分の意志を相手に伝える内容のあるもの

だけでなく、口からでまかせの、いわゆる「無駄口」があります。「雑音」と

いってもよく、ドイツ人はこれを「レ-ル・ラウフ」(空言)(くうげん)といって

忌み嫌っています。

 そうした言葉をスイスの思想家マックス・ピカ-ト(1888-1963)はその著

『沈黙の世界』で「騒音」といい、

        「ことばは沈黙からきて沈黙に帰る。

              騒音は騒音からきて騒音に帰る」と述べています。

 そうした言葉はいくら語っても意味や価値もなく、本当の言葉は、人間の心の

根源にある本心という名の沈黙から、湧き出るというのです。

 日本人であろうと西洋人であろうと、いくら言葉を多く労し、美しく飾った

ところで、それが本心からのものでない限り何にもならないでしょう。

 冒頭の句の言わんとするところは、ただ「沈黙は金なり」として黙っている

ことではなく、本心から出た言葉であるかどうかを問題にしているのです。

                     ( 仏教伝道協会 みちしるべより )

    今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。 感謝!

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