「禍転じて福となす」 という言葉どおりの生き方 第 107 号

日本歌謡界の重鎮・船村徹さんと不世出の歌手・美空ひばりさん。

プロとして高い境地に立たれるお二人ならではの

感動的なエピソードをお届けします。

────────『今日の注目の人』──

◆ 徹底したプロの仕事 ◆

船村 徹(作曲家)

   ×

村上 和雄(筑波大学名誉教授)

───────────────────

【船村】

特に思い出に残っているのは、ひばりさんにとって

最後の曲になってしまった「みだれ髪」です。

作曲当時、彼女は大病を患って福岡の病院に入院中でした。

私もそれまでに50曲近くを提供してきたけど、

今度ばかりは体調のこともあるし、いままでのものよりも少し簡単な

歌をつくろうと思っていたんですよ。

ところが作曲の途中で何度かひばりさんとやり取りをする中で、

返ってくるのは「それでは嫌です。ひばりはまだまだ歌いますから」

の一点張り。早い話が、手抜きをしないでください

ということなんですよ。

普通、病気をした人間であれば、楽譜を見て「かえっていろいろと考えていただき、

ありがとうございます」とお礼を言ってもらえるところが、

ひばりさんは全くそうではなかった。

【村上】

「みだれ髪」は心に染みますけど、曲が完成するまでに

そういう背景があったのですね。

【船村】

ひばりさんが退院してすぐにその曲を歌わせてみたところ、

これがまた見事でした。

ああいう人は「禍転じて福となす」という言葉どおりのことが

できてしまうんですよ。

入院中に声そのものを休ませているから、前よりかいくらか若くなっている

ような感じがしました。

そもそも九死に一生を得るような大病をした人とは全く感じられませんでしたね。

そういうのがやはり、地球外生物なんじゃないかと思うのですよ(笑)。

普通だったらとても考えられませんから。

【村上】

しかし、そういう方と出逢えたというのは大きいですね。

【船村】

むしろ怖いですよ。と同時に、「なんでこういうふうにしなかったのだろうか」

とか「もっとこういう歌を書いていたら、もっといいものになっていたのではないか」

という悔恨のほうが多く残っていますね。

それから私どもの仕事というのは、常に「次は何をやろうか」とか

「こういうものがあったらいいな」と考えているものですから、いまでも

いいアイデアがパッと思いつくと、「どうしても、ひばりでいきたいな」

と思う。ところが次の瞬間には「あぁ、もういないのだな、彼女は」と。

その時の喪失感というのは大きいですよ。怖いものですね、現実というのは。

  月刊誌『致知』 2016年4月号  特集「夷険一節」P14

                 今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。 感謝!

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