私たちはいかなる時にも しっかりしているとは限らない 第 254 号

 ロンドン大学の教授で有名な

森嶋道夫氏の非武装中立論。

 これをばっさりと一刀両断したのが、

21歳の女性の投稿記事でした。

 あの評論家・福田恆存氏も感心した

その一文とは──

────────[今日の注目の人]───

 ★ 「これは素人の論文」 ★

占部 賢志(中村学園教授)

───────────────────

【占部】

 こんな事例がありました。

 かつて、ロンドン大学の教授で著名な

森嶋通夫氏が『文藝春秋』誌上で持論の

非武装中立論を展開したことがあります。

 国際的に知られた人物の主張でしたから、

反響も大きかったのですが、反論として

見事だったのは、次号の投稿欄に

載った21歳の女性読者が綴っ

た読後感でした。

 このことを私が知ったのは、評論家の

福田恆存氏が取り上げたからです。

 あの福田さんが感心した

ほどの一文でした。

【教師B】

 森嶋氏の非武装中立論というのは、具体

的にはどんな考え方なんですか。

【占部】

 当時は冷戦下でしたから、我が国に

とっていちばんの脅威はソ連でした。

 森嶋氏はそのソ連が万一にも攻めて

きたら、「秩序ある威厳に満ちた

降伏」をすべきだと述べ、「ソ

連の支配下でも、私たちさえ

しっかりしていれば、日本

に適合した社会主義的

経済を建設すること

は可能である」と説いたのです。

【PTA役員A】

 侵略されたら降伏するのがいちばん

というわけですか。

 典型的な非武装中立論ですね。

【占部】

 で、このロンドン大学教授を向こうに

まわして、彼女はこう切り返したのです。

 「“私たちさえしっかりしていれば”と

いう一項によって、これは素人の

論文に終わった。

 私たちはしっかりしていない、もしく

は私たちはいかなる時にもしっかり

しているとは限らない……

 それが軍備ゼロで、降伏してから後、

個々人が尊厳をもって生きていける

だけの社会体制を新たに築いて

いけるのか、私には不安だ。

 支配側の体制にいち早く順応して、

そちらに頭角をあらわす人々は

どんどん出るに違いない」

【教師B】

 すごい洞察力ですね。21歳とは

とても思えません。

【占部】

 森嶋論文の誤りを人間洞察を

欠いた「素人の論文」と

一刀両断したのですよ。

【教師A】

 どうしたら、これほどの眼力を

持てるのでしょうか。

【占部】

 この女性には、自分というもの

が見えているのです。

 というより……

 ※今回の連載では、様々なデータを

もとに若者像を浮かび上がらせる

 そこには、ちょっと意外なデータも…。

続きは本誌でどうぞ! 

『致知』2016年5月号  

  連載「日本の教育を取り戻す」P124

 今回も最後までお読みくださり、

    ありがとうございました。 感謝!

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